大規模なITサービスマネジメントツールのリプレースで 「LMIS」を採用、LMIS開発チームのサポートにより4カ月での短期切り替え計画を完遂|本田技研工業株式会社 様
導入の背景、選定の経緯
二輪や四輪などさまざまなモビリティの創造・進化を追求している本田技研工業株式会社(以下、Honda)。同社内で使用される業務システム保守の安定運営に欠かせないITサービスマネジメント基盤として、従来稼働していたITSMツールの短期間での切り替え・移行を計画。現行業務や管理規定とのFit & Gap調査を行い、結果として既存ITSMツールと同じSalesforceプラットフォームで最新UIを活用できること、ITIL準拠のITSMツールとしてグループ会社でも採用実績があり、そのコストパフォーマンスも評価して「LMIS(エルミス)」を採用しました。
導入のポイント
- 現行の管理規定・ワークフローに沿った運用プロセスを「LMIS」標準の機能、コンフィグレーションのみで実現、クラウド環境での継続アップデートの足かせとなる複雑なカスタマイズを排除。
- 既存ツール独特のマスターデータ環境を大きな変更・カスタマイズなく、「LMIS」上のマスターデータ環境へ登録・移行。
- 既存ツールよりも固定費を抑えつつ、システム切り替えと業務移行を計画どおり4カ月で推進できたことに加えて、最新のUI環境となったことによるユーザーの利便性を向上。
目次
導入の経緯利便性向上・固定費削減の両立とバージョンアップ対応が困難な状況からの脱却を目指す
1人ひとりの夢を原動力に、二輪、四輪、パワープロダクツ、航空機などの多様な領域でモビリティを創造するモビリティカンパニーであるHonda。「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供する世界中の1人ひとりの『移動』と『暮らし』の進化をリードする」という2030年ビジョンを掲げ、モビリティやロボティクス、エネルギーの3つの分野に注力しています。2022年度には二輪や四輪、パワープロダクツ含めて2,800万台を超える世界販売台数実績を誇るなど、グローバル企業として移動と暮らしの進化に貢献する新たな価値提供を続けています。
そんなHondaの広範な業務のスムーズな推進に欠かせないITシステムの企画から設計・開発、維持・運用保守を行っているのが、デジタル統括部 SCMシステム部とセールス・コーポレートシステム部です。常駐の協力ITベンダーを含めて約700名という大規模な体制で、サプライチェーンマネジメントと販売管理・コーポレート管理領域にわたる、日々の業務システム企画・開発とその運営・保守を支えています。
これらのシステムの維持運用・保守に必要なインシデント管理などを行うためのプラットフォームとして、2015年からSalesforce上で提供されるITSMツールを採用、両部を横断する一元管理化と見える化を実現・運用しています。
本田技研工業株式会社 セールス・コーポレートシステム部 システムサービス企画課
平馬 氏
「従来はそれぞれの業務アプリごとに独自の管理台帳でインシデント管理や変更管理・リリース管理などをそれぞれ運用していましたが、これらの属人化・個別最適化した運用を標準化・一元化すべく、自社の維持運用管理規定に沿ったフローの実現が可能でグローバルで利用実績のあるITSMツールを採用し、カスタマイズの上で導入・展開してきていました。」とセールス・コーポレートシステム部 システムサービス企画課 平馬 誠司氏は説明します。
「ツールを導入して運用も定着していた2021年末、既存ツールの提供メーカーから本サービスは今後拡張しない、別途提供する新ITSMツールへの移行を、という提案を受けました。また、自動車業界は100年に1度と言われるビジネスモデルの転換期を迎えている中で、新事業領域へのコスト集中に向けて既存業務の固定費削減が求められている状況にあり、その固定費の削減策として新たなITSMツール環境への移行にチャレンジすることになりました。」と平馬氏は当時を振り返ります。
「既存環境の契約更新日が迫っており、期限内に切り替えができるのか不安でしたが、既存システムの固定費の削減に少しでも貢献しなければと思いました。また、既存環境はカスタマイズの影響もあってSalesforceのバージョンアップに追従できておらず、新しいUIによる利便性向上を享受できていない現状からの脱却も狙って、将来的な進化もできるITSMツール環境への刷新を決意したのです。」と平馬氏。
選定のポイントグループ企業での導入実績と、社内の維持運用管理規定への柔軟な対応を評価
既存環境の提供ベンダーから別のソリューションの提案もあった中で、自社の維持運用管理規定に沿った業務フローを短期間で実装・適用でき、よりコストも抑えられる移行環境を模索されていました。そこで注目したのが、メインフレーム運用での「A-AUTO」を中心に、Hondaと数十年の取引実績があるユニリタが提供する、ITサービスマネジメントのベストプラクティスであるITILに準拠したサービスマネジメントプラットフォーム「LMIS」でした。
「ITサービスマネジメントツールとしてITILに準拠した機能が標準提供されており、コンフィグレーション設定の範囲で柔軟にカスタマイズが可能な点と、同様のシステム維持運用業務を行っているグループ会社の1つであるホンダアクセスでも『LMIS』を採用しており、ツールとしての実績も十分だと考えました。同社のメンバーに実際にどう使っているのかヒアリングさせてもらうなど、運用もイメージしやすかったことも大きかったです。また、ユニリタの開発メンバーが当プロジェクトに直接参画して支援いただける、切り替え後も同社の運用サポートメンバーが支援可能というお話もあったため、4カ月という短期間でのチャレンジングな切り替えとその後の運用も確実に推進できると思いました。」と平馬氏は話します。
Hondaのシステム保守を統制する維持運用管理規定の7つのプロセスと「LMIS」の管理プロセスの突き合わせを行い、短期実装と切り替え・運用が可能かどうか、ユニリタとFit & Gapを検討した結果、「LMIS」で十分運用できることを確認して「LMIS」の採用を最終的に判断し、短期切り替えプロジェクトを開始しました。
背景とチャレンジ
- ITSMツール提供ベンダーからの現行ツールの機能改善終了、新ツール環境への移行・コスト見直しの提案をきっかけに、約1,000の業務システムを管理対象として約1,700名の利用ユーザー(IT部門:700名、ユーザー部門:1,000名)規模で運営している既存ITSMツール環境を同契約の更新期限までに切り替える計画を立案。
- 自動車産業の100年に1度のビジネスモデル転換期に際し、デジタル改革への注力・コスト集中が必要とされる中、既存の業務システム維持運用の固定費削減を目標に掲げ、短期間での切り替え・移行計画に着手。
- グローバルレベルでの内部統制・コンプライアンスの一層の遵守が求められてきている中で、社内システムの維持運用管理規定にのっとったワークフローの確実な実装・適用も必須の要件。
実現に向けた方策
- グループ会社内でも採用実績があった「LMIS」をFit&Gap分析にて現行ワークフローとの親和性を確認の上、選定。
- 「LMIS」の既存機能・フローを最大限活用し、現行システムと同等の管理項目を維持した上で、必要最小限のカスタマイズに絞り込み、4カ月での切り替え実現と導入一時費用削減を追求。
- 「LMIS」提供ベンダーであるユニリタの開発技術チームによる直接サポートおよび開発者教育を受けつつ、短期間での自社ワークフローの実装と履歴データ移行を手の内化(内製化)して推進。
導入効果大規模ツール環境の切り替えをわずか4カ月で推進し、固定費削減とユーザーの利便性向上を実現
現在、同部ではIT部門やシステムオーナー部門含めて1,700名ほどが「LMIS」を利用しており、 両部横断で共通のツールとし12の課が利用するITサービスマネジメントの基盤として活用されています。アドオン開発をゼロにおさえ、「LMIS」がもつ標準機能のコンフィグ設定の範囲内で同社の維持運用管理規定に沿った運用フローを実現しています。
「社内システムの維持運用管理規定にて定められたフローに沿った、我々の業務プロセスを個別のカスタマイズ開発を行わずに実装できたことで、年3度ほど実施されるSalesforceのバージョンアップ時の影響を最小化することができています。また、ユニリタの迅速で手厚いサポートのおかげもあり、結果的に今回の切り替えに伴うコンフィグレーション変更や業務検証などの期間短縮や、一時コストを最小化することにもつながりました。」と平馬氏は話します。
現在は、1,000を超える業務アプリがシステム体制/グループ体制として各業務アプリを担当する受付グループも含めて「LMIS」上にサービス登録されており、「LMIS」のオプション機能である「セルフサービスポータル(以下、SSP))」から受付グループ宛てに業務依頼を申請すると、その内容が利用部門責任者に承認されたタイミングで該当アプリの担当グループに自動連携・通知されるように実装されています。「以前のツールでは分からなかった申請・承認のステータスや依頼案件の進捗状況なども把握しやすくなるなど、ユーザー部門の利用者からも好評です。」と平馬氏は話します。
SSPの有効活用の他にも、Salesforceのダッシュボードやレポート、そしてビジネスチャットツールのChatterや「LMIS」のメール送受信機能なども活用し、ユーザーとの円滑なコミュニケーションを実現しています。システムを維持運用する上で必要な案件はすべて「LMIS」に登録されており、9カ月ほどで18,000件ほどの案件登録が行われています。内部監査や外部監査の際にも「LMIS」の画面キャプチャーからきちんと承認が行われていることが提示できるなど、監査証跡を一元管理・説明できる環境としても有効活用できています。
タイトな日程での移行を計画どおりに進めるためのユニリタのサポート体制については、当プロジェクトを推進していく中で判明した課題への対応や切り替え後の運用サポートも含めて平馬氏は高く評価しています。
「既存ツールの契約満了期間が間近に迫った中、部内各課での検証においてPDFによる帳票出力機能の必要性が浮上し、当初の計画外の検討・対応が必要となりました。『LMIS』ではPDF出力機能が標準実装されていないこともあり、ペーパーレス化の波に合わせてすべて電子承認することで手書きサインを廃止する計画で進めてきていましたが、すそ野の広いユーザー展開を混乱なく進めるためにも、手書きサインとPDF帳票の出力による業務フロー機能の併存は過渡期としてやはりMust、という判断がされて急遽対応が必要となったのです。極めて急な検討でしたが、ユニリタからすぐにSalesforceのAppExchange上で提供されているPDF出力アドオンアプリを提案してもらい、短期間のうちに実装・テストすることで、スケジュールどおりの切り替えを守り切ることができました。スピーディーなユニリタの対応と『LMIS』の拡張性に助けられました。急な要求に対しても最適な解決策を迅速に提案いただいてとても助かりました。」
※AppExchangeとは・・・Salesforce向けに開発された専用のアプリケーションストア。多様な業種や業務向けのアプリケーションが提供されており、アプリをインストールすることでさまざまな機能の拡張やカスタマイズが可能。
このように推進中にいくつか課題に直面しながらもHondaとユニリタがパートナーとなり、協力しながら切り替えプロジェクトを進め、結果として計画どおり4カ月以内の移行を実現しました。
「そもそも、これだけ大規模な環境の切り替えを4カ月以内で確実に完遂させることがミッションとなっている中で、いくつか想定外の問題も起こりました。これらに対して真摯に向き合い、私たちに寄り添って支援いただいたユニリタのメンバーには本当に感謝しております。」と平馬氏は話します。
今後の展開入力粒度の平準化と蓄積されたデータを活用して障害発生の低減を目指す
「現在は、最新のSalesforceおよび『LMIS』にバージョンアップできる状況にありますが、今後のバージョンアップへの対応も定期運用として確立していき、新機能の業務活用を図りたいです。また、利用者によって入力や管理粒度に差がある運用を標準化し、すべてのアプリを横並びで可視化、運営を高位平準化することが私の新たなミッションです。期限に合わせた移行を優先させたため、現在の使われ方は旧ツールのルールの踏襲部分が多い状態です。今後は蓄積されたデータをレポート・ダッシュボードを有効活用して分析にも役立てていきたいです。」と意欲的に平馬氏に語っていただきました。
本田技研工業株式会社
事業案内
輸送用機器(二輪車・四輪車・パワープロダクツなど)の研究・開発・製造・販売
設立 1948年(昭和23年)9月
従業員数 33,065名(2023年3月31日時点)