IT全体最適化を目指し「LMIS」を採用|兵庫県信用農業協同組合連合会 様
~「A-AUTO」との連携で発生した障害のインシデント登録自動化を実現~
メインフレーム時代から、ジョブ管理ツール「A-AUTO」を利用している兵庫県信用農業協同組合連合会(以下、JAバンク兵庫)では、2007年のオープン化を経て、「JAバンク兵庫の目指す10年後の姿」という経営方針をもとに、情報系システム基盤を更改し、運用管理基盤の抜本的な見直しを行ったのが2014年のことです。ツール面においては、「A-AUTO」の最新バージョンを継続採用するだけでなく、A-AUTOVer8.0より実装された「Zabbix」とクラウド版ヘルプデスク「LMIS」を組み合わせることで、運用管理におけるサービスレベルの向上とコスト削減を実現しました。
導入メリット
- 運用管理費を約45%削減
- ITIL準拠でスリム化したシステム、ディスク容量が従来の3倍の容量になっても対応可能
- 「インシデント」が改善のためのヒントの山に
LMIS以外の導入製品
目次
導入の経緯ジョブ管理、サーバ監視、周辺機器の監視を統合コンソールへ集約
システム統括部
副部長
古川 真人 氏
JAバンクでは、勘定系のシステムはJASTEM(全国のJAが利用)が担当し、情報系はJAバンク兵庫のような県レベルのセンターが担当するというすみ分けがなされています。2007年に従来のメインフレームからシステムのオープン化を行い、ダウンサイジングやコスト削減、柔軟なシステムの構築を実現しましたが、2014年にはシステム基盤の老朽化が課題となり、情報系システム基盤の更改が検討され始めました。
オープン化したものの、業務システムごとに個別最適化を図ってきた結果、サーバが乱立してしまいました。この弊害として、保守費用がかさみ、システム全体のコスト(TCO)が増加。さらにはセンター内ネットワークの複雑化や、ベンダ主体のシステム導入によりブラックボックス化していたことから、「JAバンク兵庫の目指す10年後の姿」という経営方針(1.JAバンクの競争力維持・強化、2.地域密着を活かした新たなサービスの創造、3.顧客満足度の向上・顧客信頼度№1の地位確立)に則り、プロジェクトメンバで更改方針の議論を実施することになりました。
JAバンク兵庫では、主に約80台のサーバと約90台のネットワーク機器が監視対象となり、総監視項目数は2万項目に及びます。更改対象の1つである運用管理基盤のリプレイスにあたっては、監視範囲を拡大し、これらの周辺システムも含めた統合的な監視を行い、「システム全体コスト(TCO)の削減」「分析データの大量化・多様化における対応スピード向上」などを目指すこととなりました。
同社では、メインフレーム時代からユニリタのジョブ管理ツール「A-AUTO」を利用しています。「A-AUTO」のVer8.0以降に「サーバ監視コンポーネント」であるOSSの「Zabbix」が組み込まれたことから、「A-AUTO」のスケジューラ部分のライセンス費用だけで済むのであればコストメリットが生まれると判断。監視の範囲や現行の監視項目の移行可否なども検討した上で、引き続き「A-AUTO」を利用し、新たに実装された監視機能を活用することで利用範囲を拡大することになりました。
さらに、インシデント管理など、運用管理におけるサービスレベルの向上を目的に、クラウド版ヘルプデスク「LMIS」もあわせて導入しました。「LMIS」を「A-AUTO」や他のシステムと連携させることで、システムからアラートを受け取ると自動的に「LMIS」にインシデントが取り込まれるようになりました。これらの導入により、ジョブ管理だけでなくサーバ監視、周辺機器監視にも加え、障害管理、インシデント管理も統合的に行える運用管理基盤構築を目指したのです。
選定のポイント運用改善に向けて、「ノウハウをためる」から「インシデントを分析する」に
システム統括部
東田 貴成 氏
製品選定段階からシステム更改のプロジェクトに携わった、システム統括部 副部長の古川氏は「メインフレーム時代から、A-AUTOにおけるユニリタ(旧・BSP)のサポートには安心感があったので、新規導入する製品ではあったもののLMISをA-AUTOに連携させる点での不安はなかった」と振り返ります。古川氏によれば、従来のインシデント管理は、担当者のもとで属人化されてしまいノウハウが残らなかったため、「誰でも同じことができるようにしたい」という思いを持っていたことが「LMIS oncloud」の選定につながったとのことです。
また、システムの全体最適に求められるITIL準拠の製品として「LMIS」を見た場合、「改善に役立てることのできる製品」であったことに注目したと言います。比較した他製品は「ノウハウをためるもの」であり、運用改善のための分析などに不満があったとのことです。
その他にも、関係者と要件をすりあわせるための会議で「Excelの台帳と紙では分析ができない」という声がプロジェクトチームのメンバーから挙がったことで、「LMIS」を提案したと言います。
実際に、「LMIS」でインシデント管理に携わっているシステム統括部の東田氏は、まさにこの点で恩恵を受けていると言います。Excelの台帳で管理されているインシデントでは、複数の台帳を照らし合わせるなどの作業が必要となっていたものが、「LMIS」に蓄積されたデータを検索することで、格段に“調べる”時間が削減できたことを効果として挙げています。
古川氏は「インシデント管理に関するノウハウをためる段階は終わった。今後は、インシデントそのものを減らすために、過去のインシデントを分析するフェーズに移行したい。インシデントというとマイナスイメージがあるようにも思えるが、改善のためのヒントの山と考えて前向きに活用していきたい」という展望を語っていただきました。
導入の効果運用管理ツールのコストを45%削減
新システムへの移行で、具体的な効果として顕著なのがコストの削減です。これまで商用のツールを用いてサーバ監視を行っていましたが、「A-AUTO」に内包されたOSSの「Zabbix」に切り替えたことでコストが大幅に削減できました。新たに導入した「LMIS」の初期費用・ランニングコストを含めても年間の運用管理費を約45%削減することができました。
システム性能の向上としては、仮想サーバを採用したことで周辺システムも集約することができ、センター処理時間を約50%に短縮できました。また、従来のシステムは拡張しづらかったことから、システムの容量にあわせて何とか収めるという運用が必要でした。その反省から、ITIL準拠でスリム化したシステムにした上で、ディスク容量が従来の3倍の容量になっても対応可能、かつ、それ以上の拡張も可能なシステムを構築しました。
さらに、システム導入が標準化されたことも、今回のプロジェクトにおける効果の1つです。「A-AUTO」の日々のスケジュール管理を行っている担当者は、「A-AUTOは製品の性格上、安定稼働して当たりまえ」と言います。従来のシステム導入ではとにかく新システムが「安定して動く」ことを最優先してきたため、要件定義があいまいなまま個別に検討を進め、ソフトウェアライセンスの買い直しや同種製品の導入などの重複が発生していました。新規システム導入時にはベンダからの提案で監視とジョブ管理は別製品で行っていたものを、情報系システムと同様に「A-AUTO」に統一するなど、今後は今回の更改プロジェクトで策定したシステム導入ルールによる構築が行われることとなります。
また、当初は想定していなかった効果もあります。重複や無駄の削減が行われただけでなく、一般職員やSEにコスト意識が生まれたことは、数値に表すことができないものの、大きな効果だと古川氏は指摘しています。
古川氏は「システムを導入しただけで満足せず、いかにサービスレベルを維持・向上していけるかが今後の取り組みになる。次回の更改時に『これを捨てるのはもったいない』と思えるようなシステムに育てていきたい」と意気込みを語っていただきました。ユニリタは、そんなシステム作りをこれからもサポートしていきます。