インシデント管理で何がしたかったんだっけ? ~ITSM活動の目的とビジョンをもう一度振り返ろう~

ITサービスマネジメント(ITSM)の担当者と話をすると、
- 成果に結びついていない
- 何をすればいいのかわからない
- 成果が出ているか分からないのに報告をしなくはいけない
といった声を耳にします。
こういったITSMの成果に悩んでいる方に向けて、今回は、ITSM活動の目的やビジョンについてお話します。
目次
ITSMは目的の明文化が大切
ITSMに望むこととして、
- 特定の従業員でしか対応できない業務を解消したい
- 仕事の流れをわかりやすくしたい
- 監査で作業証跡やプロセスについての指摘をなくしたい
- ユーザーニーズにより応えたい
- 毎日発生するトラブルを減らしたい
- ベンダーごとに異なる業務フローを分かりやすくしたい
といったことが挙げられます。
そして、いずれの希望を実現するのに欠かせないのが、目的の明文化です。
例えば、上述の希望を目的に置き換えると、
- 属人化の解消
- 業務の見える化・シンプル化
- 監査対策
- サービスの向上
- 安定した業務の実現
- ベンダーコントロールの実現
といったようになります。
目的が明確になっていないと、取り組みを続けてくうちに当初の予定から大きくぶれてしまうことがあります。
ですが、目的が明文化されていれば業務の指針となるため、都度の振り返りや引き継ぎがスムーズに行えます。なかには、ITSMをスタートさせたものの、なんとなくで始めてしまったことで形骸化してしまうケースがあります。
このような場合でも、目的が明文化されていれば振り返りに役立ちます。
目的を考えるには状態目標を意識する
目的を明文化するために欠かせないのが「こうなりたい(なる)」という状態目標です。
状態目標を立てる際は、現在起きている事態やトラブルの解決を目標としても問題ありませんが、大切なのはそれらの問題が解決された後のビジョンまでを見通すことです。そこまで明確になっていれば、KPIを立案して目標への具体的なアプローチが可能になります。
ITSMの活動を妨げる要因
目的を明文化してITSMを進めようとしても、その活動を妨げる以下のような問題と要因が出てきます。
問題 | 要因 |
活動継続のためのルールが多く現実的に守ることが不可能・困難 | 複雑なルール |
ルールが徹底されない | ルールの不徹底・管理者の不在 |
経営層に活動を継続する目的を問われ予算取りや人の確保が困難 | 経営層への説明不足 |
運用ルールにツールが合わない | 業務に合わないツール |
資料を作ることに膨大な時間がかかる | 時間のかかる報告書作成 |
これらの問題と要因はどこの企業にでも起こりえます。そして、それぞれ次のような対策を講じることで活動の継続が期待できます。
- ルールや業務プロセスをシンプルにする
- 管理プロセスごとに目的を定義し開示する(目的の見える化)
- 業務の状況を利用者や管理者に公開する(状態の見える化)
- 少ない管理工数で運営する(手のかからない運営)
ですが、ルールを設定するときは注意が必要です。最初から厳格なルールを設けてしまうと、活動に支障を来す恐れがあります。
具体的なITSM
ITSMの具体例をみてみましょう。
A社事例:ヘルプデスクでインシデント管理活動を取り組んでいる
日次 | 当日の発生インシデント件数・対応状況・困り事項の共有 |
月次 | 当月の発生件数、クローズ件数、オープン件数の集計、発生傾向の分析 |
年次(or 四半期) | 1年間(or四半期)の活動を通しての実績、課題の共有、改善点の検討 └翌年(or次四半期)で改善点の改善を行う |
B社事例:全国拠点のヘルプデスクでインシデント管理活動を取り組んでいる)
リアルタイム | 全国拠点向けに、拠点ごとのKPI順守率、上位ランキング、下位ランキングの公開 |
月次 | 当月の発生件数、クローズ件数、オープン件数の集計、発生傾向の分析 |
年次(or 四半期) | 1年間(or四半期)の活動を通しての実績、課題の共有、改善点の検討 └翌年(or次四半期)で改善点の改善を行う |
どちらも、定期的な振り返りが行われていることが特徴です。企業において、活動の振り返りや情報共有を行う頻度は関係者の人数や活動範囲によってさまざまです。ですが、どれほどの規模の企業であっても、よりよい活動のために振り返りが大事になります。活動を始める際には、そうした振り返りを、いつ、どのタイミングで行い、改善していくのか決めましょう。
ITSM活動は目的とビジョンが大切
今回は、ITSM活動にフォーカスをあて、活動を運営するための目的やビジョンについて触れました。
ITSM活動に関わらず、業務活動を行うには、目的やビジョンが明確になっていないと活動自体が形骸化してしまい、意味のないものになってしまいます。
もし、ITSM活動が長期間にわたり、何がしたかったのか、何がしたいのか分からなくなったときには、当初の目的やビジョンに立ち返りましょう。仮に、原点に立ち返って必要ない活動とわかれば、終止符を打つという決定も大切です。
※この記事は、2016/08/19に投稿した内容を2019/11/08にリライトしたものです。