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ITILに準拠したリリース管理とは?プロセスや変更管理との違いをわかりやすく解説

ITILに準拠したリリース管理とは?プロセスや変更管理との違いをわかりやすく解説

システムやサービスの変更・更新は、企業活動において避けられないものです。
しかし、そのリリースが不適切に行われると、予期せぬトラブルやインシデントが発生し、カスタマーサポート部門に膨大な問い合わせが殺到する事態になりかねません。

このような事態を防ぎ、安定したサービス提供と顧客満足度の向上を実現するために不可欠なのが、国際的なベストプラクティスであるITIL(Information Technology Infrastructure Library)に準拠したリリース管理です。

本記事では、ITILにおけるリリース管理の基本から、その具体的なプロセス、そして混同されやすい変更管理との違いまでを、カスタマーサポート部門の視点も交えながらわかりやすく解説します。


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ITILにおけるリリース管理とは?

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークのことです。
ITILに準拠することで、組織はITサービスを効果的かつ効率的に提供し、顧客に価値を届けることができます。

ITILにおいて、リリース管理とは、承認された変更(新しいソフトウェアやハードウェア、ドキュメントなど)が本番環境に展開され、ユーザーが利用できるようになるまでの一連のプロセスを管理することを指します。
その目的は、ITサービスへの変更がビジネスに与えるリスクを最小限に抑えつつ、計画的かつ確実にサービス提供を維持・向上させることです。

カスタマーサポート部門にとって、リリース管理は極めて重要です。
不適切なリリースは、システム障害やサービス停止を招き、結果として顧客からの問い合わせが急増し、部門の業務負荷を大幅に増大させます。
また、顧客満足度の低下やブランドイメージの毀損にもつながりかねません。

ITILに準拠したリリース管理によって、このようなリスクを軽減できます。

リリース管理と変更管理の違い

リリース管理と混同されやすい概念に「変更管理」があります。
これらは密接に関連していますが、それぞれ異なる役割とスコープを持っています。

変更管理(Change Management)は、ITサービスや構成アイテムに対する変更要求を評価、承認、計画、実装、レビューするプロセスです。
変更管理の主な目的は、サービスに影響を与える変更を統制し、リスクを最小限に抑えることです。
つまり、「何を変更するか」を決定し、その変更が適切であるかを判断します。

一方、リリース管理(Release Management)は、変更管理で承認された変更を、実際に本番環境に展開し、ユーザーが利用できる状態にするための一連の活動を管理するプロセスです。
その目的は、変更が本番環境にスムーズかつ安全に導入され、意図した通りの価値を提供することです。つまり、「承認された変更をどのように届けるか」を管理します。

両者の関係性は、変更管理が「変更の承認」を行い、リリース管理が「承認された変更の展開」を行うという流れで成り立っています。
変更管理がなければ、リリース管理は無秩序な変更を本番環境に投入することになり、リスクが高まります。
逆に、リリース管理がなければ、承認された変更が適切にサービスとして提供されることはありません。

カスタマーサポート部門は、変更管理プロセスにおいて、提案される変更が顧客にどのような影響を与えるか、どのような問い合わせが増える可能性があるかといった情報を提供できます。
リリース管理プロセスにおいては、新しいサービスや機能に関する情報を受け取り、顧客への説明やFAQの準備を行う重要な役割を担います。

変更管理について詳しくは、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】
ITILに準拠した変更管理とは?メリットやプロセスを徹底解説

ITILにおけるリリース管理プロセス(ITIL v3)

ITIL v3におけるリリース管理は、以下の4つの主要なプロセスステップで構成されます。

1. リリース方針と計画(Release Policy & Planning)

このフェーズでは、リリースに関する全体的な方針を確立し、具体的なリリース計画を策定します。
これには、リリースの種類(メジャー、マイナー、緊急など)、スケジュール、範囲、関係者、役割と責任の定義が含まれます。

■主な活動内容

  • リリース方針の定義と文書化
  • リリース計画の作成(スケジュール、予算、リソース、リスク評価)
  • リリースに関わるすべての関係者(開発、運用、カスタマーサポートなど)との合意形成
  • ロールバック計画の策定

2. リリース準備(Release Build & Test)

このフェーズでは、計画に基づき、リリースするソフトウェアやハードウェアの構築、テスト、文書化、およびトレーニングを行います。
目的は、リリースパッケージが本番環境で問題なく機能することを保証することです。

■主な活動内容

  • リリースパッケージの構築(ソフトウェアのコンパイル、ハードウェアの構成など)
  • 徹底したテストの実施(機能テスト、統合テスト、パフォーマンステスト、ユーザー受け入れテストなど)
  • 関連ドキュメント(ユーザーマニュアル、管理者ガイド、FAQなど)の作成・更新
  • 関係者(特に運用チーム、カスタマーサポートチーム)へのトレーニング実施

3. 展開(Deployment)

準備が整ったリリースパッケージを、実際に本番環境に導入する段階です。
計画されたスケジュールと手順に従い、慎重に展開作業を進めます。
緊急時のロールバック手順も、この段階で実行される可能性があります。

■主な活動内容

  • リリースパッケージの本番環境への展開
  • 展開作業の監視と進捗管理
  • 必要に応じたデータ移行や設定変更
  • 緊急時のロールバック手順の準備と実行

4. 展開後の検証とクローズ(Post-Deployment Review & Close)

リリースが完了した後は、その効果と問題点を評価し、リリースプロセス全体をレビューします。
このステップは、将来のリリースプロセスの改善に繋げるための重要なフィードバックを提供します。

■主な活動内容

  • リリース後のサービス動作確認と安定性評価
  • リリース目標の達成度評価
  • 発生したインシデントや問題の分析と対応
  • リリースプロセス全体のレビューと改善点の特定
  • リリース文書の最終更新とアーカイブ

これらのステップを順守することで、リリースに伴うリスクを最小限に抑え、サービス品質の維持・向上を図ります。

ITIL v4におけるリリース管理プラクティス

ITILは時代とともに進化しており、2019年2月、ITIL v3からITIL v4へとバージョンアップされました。

ITIL v4では、アジャイル開発やDevOpsといった現代のITトレンドに対応するため、より柔軟で価値創造に焦点を当てたアプローチが採用されています。

ITIL v3との違い:プロセスからプラクティスへ

ITIL v3が「プロセス」中心のアプローチだったのに対し、ITIL v4では「プラクティス(Practice)」という概念が導入されました。
プラクティスとは、特定の目的を達成するためにリソースを組織化する一連の活動や能力を指します。
これにより、組織は特定の状況に合わせて柔軟にアプローチを調整できるようになります。

ITIL v4では、リリース管理は「リリース管理プラクティス(Release Management Practice)」として定義されています。
その主な目的は、新しいサービスや既存サービスへの変更を、利用可能な状態にし、ユーザーが利用できるようにすることです。
v3のプロセスと基本的な活動内容は共通していますが、v4では、より迅速なリリースサイクルや継続的デリバリー(CD)の考え方が強調されています。

ITILのリリース管理を成功させるためのベストプラクティス

ITILに準拠したリリース管理を成功させるためには、単にプロセスをなぞるだけでなく、ベストプラクティスを実践することが重要です。
特にカスタマーサポート部門の視点から、安定したサービス提供と顧客満足度向上につながるポイントをご紹介します。

効果的な計画の策定

リリースの成功は、計画の質に大きく左右されます。
詳細で現実的な計画を立て、関係者全員がその内容を理解し、合意していることが不可欠です。

まず、リリースによって何を達成したいのか(新機能の提供、パフォーマンス改善など)、目標を明確にしましょう。

その上で潜在的なリスクを特定し、それに対する回避策や対応計画(ロールバック計画含む)を準備することが大切です。

さらに、開発、運用、セキュリティ、そしてカスタマーサポート部門など、すべての関係者と密に連携し、情報共有と合意形成を徹底します。

徹底したテスト戦略

本番環境でのトラブルを未然に防ぐためには、リリース前に徹底してテストを行うことが最も重要です。

機能テスト、統合テスト、パフォーマンステスト、セキュリティテストなど、多角的なテストを実施しましょう。

さらに、実際のユーザーに近い環境でテストを行い、使いやすさや業務への影響を確認します。

リスク管理の徹底

どんなに準備しても、リリースには常にリスクが伴います。
リスクを事前に特定し、管理することで、インシデント発生時の影響を最小限に抑えることができます。

次のような計画が重要になってきます。

  • インシデント対応計画…リリース後に問題が発生した場合の対応手順、責任者、エスカレーションパスを明確にする。カスタマーサポート部門への情報共有ルートを確立し、顧客への迅速かつ正確な情報提供を可能にする。
  • ロールバック計画…リリースが失敗した場合に、元の安定した状態に戻すための手順を具体的に策定し、テストしておく。
  • コミュニケーション計画…リリース前、リリース中、リリース後に、関係者および顧客に対して適切なタイミングで情報を提供する計画を立てる。カスタマーサポート部門は、この計画に基づき、顧客への説明責任を果たす。

ツールの活用

リリース管理は多くのプロセスと情報を伴うため、適切なツールを活用することで、効率性と透明性を大幅に向上させることができます。

ITSMツールの導入

ITSM(IT Service Management)ツールを活用すれば、インシデント管理、問題管理、変更管理、そしてリリース管理といったITILの各プロセスを一元的に管理することが可能です。

ITSMツールを導入することで、以下のメリットが得られます。

  • プロセスの自動化…承認ワークフローやタスクの自動化により、手作業によるミスを減らし、効率を高める。
  • 情報の一元管理…リリースに関するすべての情報(計画、テスト結果、承認状況など)を一箇所に集約し、関係者間の情報共有をスムーズにする。
  • 可視性の向上…リリースの進捗状況や潜在的なリスクをリアルタイムで可視化し、迅速な意思決定を支援する。

たとえば、カスタマーサポート部門の効率化にも貢献するITSMツールとして、「LMIS(エルミス)」があります。
LMISは、リリース管理だけでなく、インシデント管理や変更管理といったカスタマーサポート部門が日常的に利用する機能も統合しており、部門間の連携を強化し、顧客満足度向上に寄与します。

まとめ

ITILに準拠したリリース管理は、システムやサービスの安定稼働を保証し、予期せぬトラブルから企業を守るための重要なプロセスです。

効果的な計画、徹底したテスト、リスク管理、そしてITSMツールの活用といったベストプラクティスを実践することで、組織はより効率的で安全なリリースを実現できます。

貴社のカスタマーサポート部門が、顧客に最高のサービスを提供し続けるためにも、ぜひITILに準拠したリリース管理の導入・改善をご検討ください。
適切なプロセスとツールの導入は、顧客体験を向上させるだけでなく、社内全体の生産性向上にも貢献するでしょう。

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